How to use Mendeley 2 |
現在、PC上で文書作成する場合、多くのユーザが使っているのは「MS Word」だろう。
筆者は、文章に装飾やルビなどタグの必要がある場合をのぞき、エディタを使っているが、一般ユーザにエディタはハードルが高いし、インタフェースに馴染みがないこともあり、多くは、デフォルトでプリインストールされていた、といった理由で、Wordを選ぶ。
昔は他にも多くのワープロソフトがあったが(「一太郎」などは今もある)、現在、その市場のシェアは圧倒的にMS一人勝ち状態だから、あえて一太郎やその他のマイナーなワープロソフトを使う意味がないのは事実だ。
しかしながら、論文作成にWordを使う場合、いくつか留意すべき点があり、それは、現実に、特に理系の分野では、いまだに「LaTeX(ラテフ、ラテック)」というフリーの組版ソフトが使われていることが明瞭に物語っているように、MS社の長年の努力にも関わらず、Wordは数式や化学式を描写するのに、あまり向いていないのである。専用ツールである(がゆえに非常に高額な)「ChemDraw」や「Mathematica」には今なお及ばないのが現状だ。
むろんWord内に、オブジェクトとして数式部品が、あるにはあるし、Office2007以降のWordが(「数式エディタ」を別途、組みこまないでも)標準装備している数式ツールで数式の描写は可能だが、慣れないと使いづらいのが現状だろう。さらに「下付き」や「上付き」の文字装飾でもなんとかなる化学式はともかく、ベンゼン環などの構造式の描写となると、数式よりも遙かに難しい。まあ、そうでなければ、いつまでも(前世紀からあるような骨董品的な)LaTeXが今もなお健在であるべくもないのだ。
とはいえ、Wordはとても日常的に馴染んだツールであるし、他のソフトで補うことで、ある程度、使い勝手の向上を図ることも出来る。
例えば、化学系の論文で誰もが記述に苦労するだろう化学式などは、フリーウェアの「ISIS Draw」を使って、その結果をWordにオブジェクトとして貼り付けることで簡単に描写できる。
化学分野のデータベースである「SciFinder」には、化学式や構造式を描くdraw機能も備えているが、事前にISIS drawで描写しておいた構造式をそこに貼り付けることも可能である。SciFinderを契約している大学や研究所でも、一時にログイン可能なアカウントが少ない場合など、けっこう待たされるので、あらかじめ作成しておくと便利だ。
ISIS Drawは、フリーウェアながら、市販の(高額な)「ChemDraw」に比しても遜色ない機能をもつ(ネット上で頒布されているが、ダウンロードには登録が必要>こちらのサイトから)。
他に、無料の化学式描写ツールとしては「ChemSketch」もある。
こうした支援ツールがある以上、やはり、学位論文くらいまでは、Wordが主体となるのも仕方ないと思われる。いかにLaTeXが、とくに理系論文の執筆とcamera-readyな論文(完成版下)に最適化されていても、ハードルの高さはいかんともしがたい。Wordで最初から最後まで書ければ、それにこしたことはないだろう。
Mendeleyもまた、Wordとの連携を前提に設計されている。
以下に、そのいくつかを略記する。
「Wordプラグイン」をインストールすると、Wordで論文作成している際に、Mendeleyから参考文献をWordのしかるべき位置に簡単に挿入できる。
論文執筆のスタンダードが、Wordである今、現行のさまざまな文献管理ツールが、ともに採用している、いわば標準装備の付加価値的機能であるが、Mendeleyにも当然、ある。
「Wordプラグイン」をインストールするには、デスクトップ版Mendeleyの「Tools」メニューから、「Install MS Word Plugin」を選択する(下図)。
下図のダイアログボックスが展開するので、OK押下する。
これでインストールは完了する。
Windows の場合)
インストールが完了すると、Wordの「参考資料」タブメニューに、Mendeleyのツールバーが表示される。
(下図:「Insert Citation 」以下~)
Macの場合)
これは筆者の環境にないので、図表が取得できなかったのだが、やはりWordメニューにツールバーが表示される。
万一、表示されない時は、「表示」メニューから「ツールバー」>「Mendeley Toolbar」を選択のこと。
いったんインストールされれば、執筆中のWord論文の任意の箇所(参照文献を引用したい場所)で、「Insert Citation」アイコンをクリックすればよい。
(被引用単語ないし文言の直後にカーソルを宛てて、そこでアイコンを押下すること)
下図では、「Jerne thought the anibody.....」の「Jerne」の箇所に挿入したいと考えている(Word本文内、赤い下線部)。
下図のようなウィンドウが現れるので、上部の検索窓で、必要な文献を、「Author、Title、Year」で検索する。
目当ての文献を選択し(下図では、細かいキーワードで検索しているため、1つしか出ていないが、検索キーワードによっては、複数候補がある場合もある)、OKボタン押下する。
下図のように、必要な参照文献が文献符合付きで引用される。
PC上で、Wordとデスクトップ版Mendeleyを立ち上げている場合は、次の方法が可能となる。
Wordで「Insert Citation」アイコンをクリックして、検索ボックスで引用したい文献を検索すると、Mendeley側に下図のようなツールバーメニュー「Cite」が表示される。
試しに、Mendeleyを立ち上げておき、Word上から「Askonas B.A」という人の論文を検索してみる(下図)。
Mendeley側で、しかるべき文献がヒットし、同時にツールバーメニューに「Cite」(と「Cancel」)ボタンが追加表示されている。
Mendeleyは英語版だが、日本語にも対応しており、検索も日本語で可能だ。
下図では、「坂戸信夫」氏の論文を検索している。
デスクトップ版Mendeleyに、坂戸論文がヒットし、カーソルが該当箇所に移る(下図)。
ここでMendeleyの「Cite」ボタン押下すると、下図のように坂戸論文が、文献符合付きで挿入される。
Mendeleyから、個別の文献を、参考文献のフォーマットでコピー&ペーストしたい場合は、文献を右クリックし、コンテキストメニューの「Copy As」から「Formatted Citation」を選択して行うことも出来る(下図)。
論文の末尾には、たいてい、参考文献(引用した文献)の一覧が付いている。というか、論文の形式として、これが標準である。
これは、おおむねフォーマットが雑誌ごとに決まっており、その形式で記述する。
こうした煩瑣な作業を、Mendeleyの機能で簡単にできる。
まず、下図で「References(参考文献一覧)」の次の行に、該当する一覧を作成したい、とする。
該当箇所にカーソルを宛てておき、上部の「参考資料」タブメニューから、「Insert Citation」をクリックする。
すると、下図のように、あらかじめWord本文中に引用した文献が一覧で作成される。
ここでは事例のために2つしか作成していないが、これが50でも100でも同じように作成される。
先述したように、こうした参考文献一覧は、雑誌によってそのフォーマットが異なる。
論文(の本文)を執筆した後で、投稿先の雑誌によって、そのフォーマットを変更することもあり得る(二重投稿は論外だが、別な雑誌に投稿先を換えたいとか、リジェクトされた論文を書き改めた後、別な雑誌に投稿する、といったことは、あり得るだろう)。
そうした場合、最初から論文の引用の仕方や、参考文献一覧をWordで作成し直す必要があるが、Mendeleyの機能で、それが自動的に再作成できる。
下図で、Wordの「参考資料」タブメニューから、「Style」のプルダウンメニューを展開すると、代表的な論文誌が一覧される。
これらの雑誌ごとに一覧のスタイルが異なるので、ここでスタイルを換えることが出来る。
「Installed」タブで、「Style」のプルダウンメニューから、「Nature」誌を選んでいる(下図)。
「Citation Style」のボックスが開き、「Nature」が明示される。
よければ、OKボタン押下する。
この画面から、雑誌を検索することも出来る。
また、Wordのプルダウンメニューの最下部には「More Styles」項目があるので、それを選択してもよい。
下図では、「Get More Styles」タブで、「Lancet」誌を検索している。
適切な雑誌が表示されたら、「Install」ボタン押下する。
(「Nature」誌などは、その単語を含む多くの誌名が一覧されるし、グループ誌もあるので、留意されたい)
あらかじめ一覧になかった誌名は、「Installed」タブ画面で表示される。
そこで「Use This Style」ボタン押下すれば、それが適用される。
類似のフォーマットはあるが、最適ではない場合、既存のスタイルから編集して、最適化することも出来る。
既存スタイルの編集は、該当誌を右クリックし、コンテキストメニューから「Edit Style」を選択する。
すると、オンライン環境で「Visual CSL Editor」がブラウザ上に起動する。
そこでスタイルを好めるところに編集し、保存すれば、以後、それが使える。
下図では、「Nature」誌から編集しようとしている。
ログイン画面が出るので、Web版Mendeleyにログインする。
下図が、Web版の「Visual CSL Editor」である。
この画面で、最適なものに編集する。
編集が終わったら、画面左上の「Style」からプルダウンメニューで「Save Style As」を選んで、任意の名前を付けて保存する。
Mendeleyは、それ自身が巨大なデータベースであり、世界中のユーザが登録した文献を匿名で収集し、巨大なオンラインカタログとして提供している。
キーワードで検索したり、関連文献をMendeleyから調べることが出来る。
Web版とデスクトップ版とで、多少、異なる。
デスクトップ版)
左フレームの「Literature Search」を選択すると、検索ボックスが表示される(下図)。
任意のキーワードで検索した結果、表示された文献を選択すると、右フレームに詳細情報が表示される。
(ここでは「Jerne」をキーワードにして検索している)
Mendeleyに、これらの書誌情報を保存するには、「Save References」をクリックする。
PDFがダウンロードできる場合には、「Save PDF」をクリックする。
「My Library」または上記の検索結果から文献を選択し、ツールバーの「Related」をクリックすると、関連文献を表示することが出来る。
Web版)
「Papers」タブから検索できる。
検索結果から文献を選択すると、個別論文のページが表示される(下図参照)。
各文献が世界中の何人のユーザに読まれているか(Mendeleyに登録されているか)、どんな読者層(研究分野、身分、国籍)に読まれているかが表示される。
Mendeleyに書誌情報を保存するには、「Save reference to library」をクリックする。
PDFがダウンロードできる場合には、「Save PDF to library」をクリックする。
各文献の関連文献を表示することも出来る。
Web版では、「Papers」タブから「Search Papers」ボックスで検索する。
下図では、「idiopathic network Jerne」のキーワードで検索している。
(こんな大雑把なキーワードだと、90万件近く、ヒットして実際的ではないが、これはあくまで事例として)
試しに、一番上の文献をクリックし、表示させてみる。
「Readership Statistics(読者統計)」で、Mendeley内での読者層やその身分が判る。
次に2番目の文献を開く。
これは、PDFで保存できる、とあるので、「Save PDF」クリックして保存する。
この文献の関連文献が、下部に一覧されているので、それも一応、披見しておく。
ここでも、「Save PDF」の印があれば、その文献をダウンロードできる(下図)。
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