How to make the e-books:novel


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■ 電子書籍の作り方 テキスト(小説)>ePUB3







 ● 総目次


          INDEX




※注記
以下に述べることは、当初、2013年02月14日に作成した時点とは、かなり違った箇所がある。
当時、急いで作成して、その時点で判らなかった最適値や、後になって、事実誤認に気づいたことなどを加筆・訂正している。
以前の記述を元にしている人には申し訳ないが、該当ファイルの修正(再作成)など、また、新規に作成する場合には、以下の記述に基づいて行うなど、よろしく配慮ねがう次第である。

■ テキストデータ


まず、なにはともあれ、テキストデータを用意しなければならない。

この場合のテキストデータとは、著作権法をクリアしているクリーンなものを指す。

青空文庫などの著作権フリーの無料頒布されているテキストや、自作のテキスト以外は、著作権法に抵触するので、アウトである。
さらに、その使用にあたり、他人に再配布したり、ましてや販売したりしてはならないのは当然のことである。
個人的な知り合いである、プロの人から好意でもらったテキストデータも、それがすでに本になって流通している場合、厳密には、出版社との契約で排他的権利が設けられているケースがあるため、私的利用でもグレーゾーンであり、要注意だ。
各人、この一点は、良識に則って遵法精神で行なってもらいたい。

楽天の「kobo」サイトには、1万点以上の無料テキストがあるし、その大半の元になった、著作権が切れた作品を有志が打鍵してテキスト化している「青空文庫」サイトもある。
なお、青空文庫以外にも、ネット上には無料の小説テキストサイトは数多くある。
著名なところでは、(むろん作者はプロではないが)「小説を読もう!」や、そこではオミットされている18禁の男性向け小説サイト「ノクターン・ノベルズ」、女性向け18禁小説サイト「ムーンライト・ノベルズ」などがある。
筆者が利用規約を読む限りでは、テキストを電書化することが禁止事項にはなっていないようだ(全て読む側の自己責任とあった)。他にももっと、探せばネットには、無料テキストが氾濫しているだろう。それらを利用するのも一方法かと思われる。

テキストデータは、もし本文中に「ルビ」があれば、「青空文庫フォーマット」のタグ付き形式で明示的に示しておく必要がある。

青空文庫フォーマットとは、日本版グーテンベルグ計画で、「青空文庫」という、版権の切れた小説その他を、有志の方が手作業で打鍵し、テキスト化し、Webサイトに公開しているのだが、その基本的な形式を指す。

主にルビが有名だが、他にも独自タグを使っている。だが、特に、ルビ表示がシンプルかつ効果的なタグなのである。
集合ルビとモノルビの違いはなく、特定の漢字の文字列に対して、ルビタグ記号「《 》」で囲んだルビを指定している。
また、連続する漢字の文字列の中に親文字が埋没している場合、「|」の区切り記号だけで親文字の始まりを明示する工夫をこらしている。

代表的な例としては、「疲労困憊」という一連の文字列があり、「困憊」だけにルビを振りたい場合、「疲労|困憊《こんぱい》」と記述することによって、親文字を「困憊」だけに限定し、そこだけに「こんぱい」のルビが振れるのである。

なんでもないようだが、これら2つのタグだけで(厳密にはルビタグは開始タグと終端タグの2つで、都合3つだが)、難読な明治時代の小説や、昭和初期とはいえ「黒死館殺人事件」といった難解きわまるルビの多出する作品などを、現代人にも易しく読めるようにしている。HTML4のルビタグの複雑さと比較すれば、この単純さの凄さが判るだろう(ルビタグは、その後、HTML5で少し簡略化されているが、メンドくさいことは相変わらずだ)。
誰が考案したのか知らないが、エライ頭脳である。

他にも、青空文庫は外字を表示するために、「[ ]」カッコなどを仕様として採用しているため、逆に云えば、本文中の文章に、「《 》」「[ ]」などのカッコ、「|」の区切り記号は使えないことになる。もし、そういう記号が文章中にある場合は、事前に別な記号に換えておく必要がある(まぁ、小説などでは、滅多にないとは思うが、一応、留意されたい)。

さらに、後述するが、章分けは、章題がない場合、ChainLPの設定にも依るが、デフォルトで全角スペースが2個以上〜6個まで「字下げ」されていたら、それを自動的に「章」として認識し、字下げされた文字列を「章題」として取得し、「目次設定」に繰り込むようにしてある。
また、「第三章」〜といった数列の章題も自動認識で取得される(詳細は、ChainLPのヘルプ「ChainLP.txt」を読まれたい)。

画像データと大きく異なる点は、そのあたりで、テキストを読み込むと同時に「目次」が設定されるので、とても便利だ。テキストからePUB化する際、目次を作成するには、手作業でやると大変な手間がかかる。XHTMLで指定するのだが、それを自動取得してくれるのだから、これは重宝する機能といえる。
むろん、元データがそうなっていない場合は、こうした自動取得はされない。だから、事前に、「前処理」として「章題」が天突きなら、字下げしておく必要がある。
(実際には、天突きでも「第xx」とかあると、自動取得されるのだが、それはエラーとなることもあるため、空白文字で字下げしておいた方が無難である)
多少、煩わしく感じるかも知れないが、後で自分で手打ちで目次設定する労力とは比較にならない(ChainLPでは、「後処理」として、手作業でも目次を設定できるが、長いテキストの場合、手間がかかる)。「前処理」として、やっておけば、確実に自動で目次が生成されるのだから、わずかな労を惜しまないことだ。
(実際には、章題は、ふつう、「第2章」といった書式で書かれることが多いので、テキストエディタの置換機能を使って、行冒頭からすぐに「第〜」とある文字列の前に、空白の全角スペースを3つか4つほど付加するよう、置換してやれば、一瞬で作業は終わるのだが、ごくたまに、文章の中で冒頭に「第一に〜」といった文字列があった場合、それも目次として取得してしまう。これはエラーとして、後で「目次設定」で削除しなければならない)

ここでも、PDFではなく、ePUB形式での出力フォーマットで話を進める。
7吋画面の電書リーダーで読むには、特に高齢化にさしかかった年代には、PDFはツライものがあるので、ePUB3フォーマットが、読書には最適だろう。

なお、電書リーダーの設定で、フォントの大きさは自由に設定されるはずなのだが、そして、確かに、購入した楽天koboサイトの電書(無料の青空文庫出自の本を含めて)は、自由にフォントを換えられるのだが、どういうわけだか、ChainLPで作成したePUB3ファイルをkobo touchで開くと、フォントの大きさは作成した時の「固定」ポイントになってしまうのだ。※注意
だから、対症療法的ではあるが、今の対応策としては、最初からフォントを大きく設定するしかない。筆者はkobo touchでは、18ポイントで作成している。ルビのフォントも合わせて、少し小さく、7ポイントにしている。
これは、後述する「詳細設定」の「青空テキスト1」というタブで設定変更できる(下図参照)。

ChainLP



※注意:この謎は、その後、ePUB3ファイル内をユーティリティソフトで直視することで判った。
おどろくべきことに、ChainLPでは、「リフロー」方式を採らず、各ページごと、JPGE画像化していたのである。別なXHTMLで規定して、そのJPEG画像を呼び出して表示している。
これでは、いくら電書リーダ側でフォントの拡大操作などしても、意味がない。初めから、フォントの大きさは決まっている(というか、版組ができている)のだ。だから、なおさら、最初のフォント設定は重要である。



とりあえず、高齢者や遠視(まあ、老眼とも云う(笑))の人向けには、PDFよりePUB形式がよいと思われる。
プレーンテキストの場合、中に挿絵などがなければ、非常にシンプルな電書にすることで、レイアウトなどに気を配らなくてよい、という利点がある。

むろん、中に挿絵や画像データを挿入することが必須であるようなテキスト(学術的なものとか、どうしても説明上、画像がいるとか)であれば、あらかじめ、ワープロなどで文書作成しておいたデータをPDF化するしかないが、そうでない場合は、ePUBが一番、日本語のテキストを電書化するのに適したフォーマットだと思われる。

実際には、ePUB3でも画像の挿入などは可能である。
ただし、ChainLPでは、テキスト内に<img>タグで配置した画像を、電書作成時に、もう一度、内部的に変換するため、元の画像がそのままの画質では、電書に反映されない(正直、かなり画質が落ちる)。ちなみに、以下の書式で挿絵画像の挿入は可能になる(ChainLPの書式では、開始タグだけでよく、終端タグは不要)。


<img src="natsume001.jpg">

つまり、やってみて上手くいかない可能性もあるわけだ。試行錯誤を覚悟して、適正値を出すか、PDFで出力するか、どちらかだろう。
テキスト主体の作品で、挿絵として画像データを挿入することは、大いにあるが、筆者はまず選択した画像ファイルを Photoshop に読み込み、画像を切り抜き(幅が高さより長いと配置で転倒するので、注意)、「グレースケール」で色情報を飛ばし、「色調補正」で「明るさとコントラスト」をほとんど真っ白に近いほどにして、名前を付け保存することで、挿絵を作成しているが、こればかりは、やってみないと結果が判らないので、いまだに試行錯誤することがある。
一番、シンプルなのは、ChainLPが用意している「cover.jpg」に文字入力して、それを扉とし、挿絵は入れない、という選択肢だろう。だが、慣れてきたら、各々、チャレンジしてもらいたい。できるだけ白っぽい画像、そしてコントラストがくっきりした画がよい。どんなにキレイな画でも、くすんだ色調だと、「明るさとコントラスト」で飛ばしても、全体にキレイな仕上がりにはならない。
さらに云えば、その画像を、自分が目論んでだ位置にピンポイントで配置するのは至難である。前後の文書量から、位置は決まるので、目次で指定した章題の前に配置したつもりでも、必ずしも、その通りに位置するとは限らないのだ。そして、作成したファイルを電子リーダで見るか、FireFoxのアドイン機能でePUBを披見するまで、挿絵の配置は判らない。
これでは、もう、コツなどなく、試行錯誤しかない(笑)。体裁を整えるか、ある程度、譲歩するか、どっちかである。1つのタイトル中、十枚以上も挿絵を入れるなら、全部、最初から上手くいくのは奇跡といってもいいだろう。不悪、ご了解ねがいたい。

F3キー押下、または上部メニューバーの「編集」>「詳細設定」で、表示されるダイアログボックス内で、詳細設定の中に「挿絵」に関する項目がある(下図参照)。
下図の「レイアウト設定」タブで、<img>タグ使用にチェックを入れておく。
これよって、テキストファイル内でHTMLのimgタグで指示した箇所に、画像が配置される。
さらに同じタブ内で、先述した、章数の目次設定取得も、ここで設定可能だ。デフォルトは2文字から6文字なので、必要なら変更もできる。まぁ、デフォルトのままにして、後はテキスト自体を整形した方が簡単だと思うが(エディタで、不揃いな、もしくは6文字以上の空白がある章題は、簡単に6文字の空白に置換可能である)。

ChainLP



画像=挿絵の配置だが――、
フォルダ内に、あらかじめ読み込む文書テキストと一緒に、JPEG画像などを格納しておき、テキスト内に、通常のHTML文書と同様、<img>タグで、例えば「<img scr="natsume001.jpg">」といった形式で記述すれば、表示される。

だが、表紙(ChainLPでは、「サムネイル」と呼んでいる)なら、冒頭に持ってくるだけでよいが、文章の途中で、適切な位置に挿絵を挿入するのは、かなり試行錯誤が必要なようである。筆者も何度か試したが、章と章の間に、ちょうどよく挿絵を挿入する、といった場面で、今もって失敗することが多いのだ。テキストデータの空白行と画像データの配置(タグ)を混在させて、どうやって順序よく揃えるのか、筆者には、いまだにコツがよく判らない。試行錯誤でやっている。

「AozoraEpub3」といった青空文庫をePub3に変換するJava系ツールが別にあり、そうしたものでは挿絵の挿入に対応している。またGoogleが開発・頒布している「Sigil(シジル)」なども対応しているようだ。
だが、どう見ても、これらは、素人向けではないので、筆者は試すだけは試したが、深く手を出す気にはなれなかった。XHTMLの構造などに詳しい人は、そちらでやる方法もあるだろうが、ザッとマニュアルを読んだかぎりでは、ほとんどプログラミングの世界に近いので、素人には、とうていお奨めしがたい。

圏点(傍点)は別な方式で対応している。
ChainLPで作成されるePUB3では、「[ ]」タグを使い、例えば、「つまり、そこに有ったのだ」という文言で、「そこ」に傍点を振りたい場合、「つまり、そこ[#「そこ」に傍点]に有ったのだ」という風に記述する。
今では別な方法もある由だが、これが一番簡単だろう。

こうしたことも含めて、ePUB3で完璧な電書を作成しようとすると、どうしても、青空文庫における「青空文庫の組版案内」や、ChainLPのヘルプファイル「ChainLP.txt」の熟読吟味が必要となる(これは解凍したChainLPのフォルダ内にある)。前者も階層構造で厖大のようだが、後者も2000行を超えるテキストファイル(123KBある)で、通読は容易ではない。

あいにく筆者には、目下、それだけの余裕がなく、これらを精緻に読み込み、いくたの試行錯誤を重ねるだけのゆとりもない。
ここでは、必要最低限の情報を、ザッとした粗読から得て、それを記述するのが精一杯である。不悪、ご了解ねがいたい。

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■ ChainLPでの作業


 解像度の設定

ChainLPでの作業は、まず、電書リーダーでの最適値の「解像度」の設定である。

ネットで調べ、また試行錯誤した結果では、筆者が持っている「kobo touch」での最適値は「600x700px」である。

※注記
2013年02月14日に記した時には、「600x750px」と記した。
だが、その後、あれこれ試した結果、高さが750pxだと、どうしてもページ表示によって画面の最低部が切れてしまう。それを回避するために、改めて最適値を求めた結果が、「600x700px」である。これは、筆者の環境で、詳細設定で、フォントの大きさを「18pt」にしていることも関連する(連番画像でのコミックス電書作成でも同じで、やはり600x750では、ページの最低部が切れてしまう)。
今のところ、だから、フォント値の大きさにも依るが、18ptで、600x700pxというのが、koboでの最適値だと思われる。

なお、すでにkobo項目を追加した人は、画面上からは消すことが出来ないため(消さなくても使わなければ、それでいいのだが、どうしても消したいなら)、ChaiLPのフォルダ内に「resolution.ini」という名の設定ファイルがある。
それを直接、エディタなどで編集することで以前のデータは書き換え可能である。
(逆に云えば、ChainLPで直接、いじらなくても、起動させる前に、この設定ファイルを書き換えるだけで、それが起動時に反映される。この設定ファイルはかなり長文なので、自分が作成したkoboが一番下にくる。上に上げたい場合などは、エディタで設定ファイルを直に書き換えた方がよい。ただし、万一に備えて、必ず、元のファイルのバックアップは取っておくこと)。
WZで開くと、以下のように記述されており、「-」記号が機種の区切り記号となっている。

-
[W:560 H:734] Kindle3(PDF)
[W:784 H:1135] Kindle DXg(PDF)
[W:1568 H:2270] Kindle DXg && PC(PDF)
-
……
-
[W:600 H:700] kobo

これは(通常は)、まだChainLPには設定されていないので、自分で追加する。

当該作業は、画像データの方を先にHTML文書作成したので、そちらを参照されたい。
下記URLに詳述している。

電子書籍の作り方 コミック>解像度

この作業により、kobo用の解像度が、ChainLPに反映される。
特に、もう一度、解像度のメニューをいじらない限り、これがデフォルトとなる。

なお、画像データのページで、元データのファイルのコピーの方法も記しているので、ファイル操作に不慣れな人は、そちらも参照してもらいたい。
(申し訳ないが、画像データでコミックを読む方法を先に記述したため、どうしても叙述が前後してしまった。重複の煩瑣を避けるため、面倒でも、解像度の設定と元データファイルのコピーは、そちらを読んで理解されたい)



 テキストデータの読み込み

下図が、「ChainLP」の起動画面である。

シンプルだが、直感的な操作が可能で、よく作り込んである。
画面左端が、入力したデータの一覧で、中央部はその個々のデータ表示欄になっており、画面右端には、元データの加工などに関わるメニュー項目が並んでいる。(サイズ項目は、600x750のままだが、これは600x700に読み替えてもらいたい)

こちらはテキストデータ(小説など)を読み込み、ePUB化するので、まず、手許にテキストデータ(出来れば、「青空文庫」形式)を用意してもらいたい。
(「青空文庫」形式については、後述する)

ChainLP



まず、テキストデータを読み込む。
あらかじめ、「画像データの読み込み」を読んでおけば、フォルダのどこに元データを格納すればよいか、判ると思う。

下図では、まず、PCのHDD内に、元データ(拙作「だるまさんがころんだ症候群」)のテキスト「darma.txt」を格納している
(マイコンピュータ=エクスプローラで表示。関連付けされた拡張子「.TXT」は非表示になっている)

ChainLP

筆者は、テキストであれ、画像であれ、元データは、ChainLPを収めたフォルダの直下に、「sagyo」というサブフォルダを作成し、そこに、毎回、作業のたびごとにデータをコピーしている。
別に、それを押しつけるつもりはないし、フォルダ名などは、どうだってよいのだが、サブフォルダは、ChainLPの直下にあった方が便利だと思われる。だが、まあ、それも人の好き好きだし、強制するものではない。

テキストデータの読み込みは、上部メニューの「ファイル」から、ドロップダウンメニュー内の「テキストを読み込む」を選択する。

ChainLP

下図のように、あらかじめ、「C:\x_soft\ChainLP\sagyo」フォルダに格納されていたデータが、表示される。
(画像データもそうであるが、この手の操作中は、ターゲットされたサブフォルダ内には、古い作業データなど残らないように、削除して、新規作成のファイルだけを格納するよう、心がけたい。複数、格納したままだと、間違いのもとになる)

ここでは、拙作の「だるまさんがころんだ症候群」(昔、文庫版の「SFバカ本」に寄稿依頼されて書いた短編)のテキストを格納している。
これは、当方の作品には珍しく、作中にルビを全く使っていない
こうしたテキストデータならば、すぐにePUB化できるので、今回はこれを使用した。

もし、ルビを使ったテキストならば、あらかじめ(後述する)「青空文庫」形式にする必要がある。
今は、とりあえず、ルビも何もない、プレーンテキストの前提で、話を進める。

フォルダ内の「darma.txt」が当該テキストファイルである(Windowsの仕様で、「関連付け」されたファイルの拡張子=「.TXT」は見えないので、留意されたい。余計なファイルを置かないのも、こうした点でミスをしないためである)。
これをマウスでクリックして指定し、「ファイル名」に確定させ、「開く」ボタンを押下する。

ChainLP


すると、次のように、テキストが「読み込み」される。

ChainLP

左端に、ページ順に一覧され、カーソルのある箇所の文章が、中央部に表示される。 また、テキストのタイトルが、自動的に右端の加工項目の「タイトル」に表示されている。

それだけではなく、左端の一覧をみると、目次が設定されているのが判る。 これは、先述したが、あらかじめ「詳細設定」の「レイアウト設定」で指定された(デフォルトでは、2文字〜6文字の)「字下げ」を自動的にChainLPが「章題」として目次に反映するためである(ただし、実際にやってみると、「第十二章」などではエラーとなったので、自動取得にも限界はあるようだ)。

むろん、作品内容によっては、2文字程度の字下げを別な意図で(作中の「引用」箇所などで)行なっている可能性がある。
その場合、もし事前に判っていれば、字下げを1文字にするとか、工夫することを勧める。
ないしは、後から目次は修正が効くので、「目次設定」で修正してもよい(だが、筆者なら、あらかじめテキストを加工するだろう。こうした作業は、段階を踏んで、次のステップへ移行し、余計な手間をかけないことが一番である)。

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 データの加工

画像と異なり、テキストでは、データの加工は、それほど必要がない。
画像は、スキャンデータならば、そのつど、画像の濃淡などが異なるため、いちいち個々のデータを表示させて、平均的なガンマ補正やシャープネスの値を決める必要があるが、テキストは、まず、よほどのことがない限り、デフォルト値でよいからである。

また、電書リーダの画面上を想定して、ChainLPの作業画面でのレイアウトに留意する必要もない。フォントの大きさを換えれば、画面は、いかようにでも変わる。電書には、紙の書籍のような「版組」やレイアウトは「無い」のだ。
さすがに、タイトル・著者名の後にすぐ、本文が続くようなテキストならば、その間に数行ないし十数行ほどスペース(改行)を入れておいが方が見栄えがするが、本当は、それすら要らないかも知れない。気になる人は、そうすればよい。それだけのことである。
電書とは、すでに紙媒体の「本」とは違う、別な何かだ。そう考えれば、「体裁」やレイアウトなど、もはや、どうでもいいのではないだろうか。

ただし、この右側の項目で、最低限、やっておくべきことは、「タイトル」と「著者名」の入力である。

下図で、赤で囲った箇所がそれだが、タイトルは自動入力されても、「ふりがな」など、他はそういうわけにはいかないので、これは手作業で入れていく。
なぜ、これを重視するかというと、ePUB3ファイルを作成した後で、ファイル名をリネームしても、電書リーダに読みこんだ際には、ここで指定したタイトルと著者名、その「よみ」が優先されるからだ。ファイル名を英文にしても、ここで日本語表記すれば、そうなるし、逆もまた同じだ。だから、ここでの記述は大事である。

ChainLP




 目次設定

次に、「目次設定」を補正する。

あらかじめ、「字下げ」された「章題」は、ChainLP側が「目次」の分節だと認識して、目次に反映されるため、たいていの作家さんが、そうしているであろうように、「1、2、3……」といった「分節章題」は、3文字ほど「字下げ」しているだろう。
そして、「第1章」などのあとに、「小見出し」がある「章題」もまた、そのようにしていると思われる。

ChainLP

上図中の「目次設定」ボックスでは、文章内の(クトゥルー神話の呪文である)箇所が、2文字、字下げしてあるため、自動的に「目次」の章題として取り込まれている。エラーである。

これは短い作品なので、あらかじめ整形してから、ChainLPにかけることが可能だが、わざと残してあったものだ。

長編とかになると、いくらエディタで事前に検索しても、こうしたエラーは、完璧には避けられない。冒頭から2文字分の全角スペースをエディタの検索機能や置換機能で探しても、また置換しても、どうしても、ミスは出てくるものだ。

もともと、人間の手が入って書かれた文章というテキストに、ヒューマン・ファクターは付きものであり、ならば、そこにヒューマン・エラーもまた不可避的に在る。 できることは、こうして、作業途中でチェックを入れて、補正するしかない。

それでも、まだ完全なチェックは不可能だろう。
だが、それくらいの誤差は、読書にとって(紙媒体の時代でも誤植はあったのだから)想定範囲内として、受け容れるしかあるまい。

上図ボックス内の「クトゥグア フォマルハウト」の箇所は、左側の一覧でみると、49ページ目になっている。
49ページにカーソルを移して、該当箇所を表示させる。
そこで、いったん、「クトゥグア フォマルハウト」を削除する。

ChainLP



その後、グレーアウトしていた「更新」ボタンを押下すれば、「目次設定」からエラー箇所は消える。「更新」ボタンを押し忘れて、次のページに飛んだりしたら、エラーは残るので、注意されたい。
これで、補正の完了である。

なお、目次設定の字下げの数値は、次のダイアログボックスで換えることが出来る。
下図は、F3キー押下、または、上部メニュー「編集」>「詳細設定」が表示される。
「青空テキスト設定1」タブ内の「レイアウト設定」の、「目次変換」の箇所の数値を変えればよい。
ただし、たとえ字下げを3とか4にして、事前の前処理で、目当ての「章題」を拾っていき、字下げしたとしても、やはり、ヒューマン・エラーは起きるはずである。
だが、まあ、それも含めて、出来るだけのことは、やっておいた方がいいだろう。

ChainLP

そうして、テキストの加工作業が終われば、「出力」ボタン押下で、ePUBに変換する。
終了時には、アラート音が鳴って知らせる。
短い作品だと数秒で終わるが、長いテキストで、しかも挿絵を沢山入れたりすると、結構(マシンスペックにも拠るが)、時間がかかる。

下図は、ふたたびマイコンピュータ(=エクスプローラで表示)で、出力フォルダ「output」内に、「[野阿梓] だるまさんがころんだ症候群」なるタイトルのePUBファイルが出力されているのが確認できる。

ChainLP

下図は、先述した、ブラウザのFireFoxのePUBリーダ・アドインで、出力したファイルを見ているところである。

特に問題なく、表示されている。
レタッチした画像だと、少しピンぼけに見えるが、koboなどのe-Inkデバイス画面で表示させると、もっと明瞭にフォントが際立つ。

以上で、テキストのePUB化作業は完了である。

ChainLP

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 その他の詳細設定

その他、「詳細設定」で特筆すべき点は、そう多くはないが、一応、筆者の設定を記しておく。参考程度に見ておいてもらいたい。

まず、最初のタブ「ファイル入力」は以下のようにしている。

ChainLP

次に「ファイル出力」タブの設定。

ChainLP

正直なところ、ヘルプテキストを読んでも意味がよく判らず、「ePUB設定」と「Kindle対応」のチェックは全て外している。
それでも、一応、ちゃんと動作するようなので、そっとして放っておいている(笑)。

最後は「ページ補正」タブの設定。

ChainLP

これも、よく意味が判らないのだが、下手にアチコチすると、koboに転送した時に、ページ中央下のページに影響する。
一応、最初の頃は、「x/xxx」という形式でページ数を出していたのだが、今はこの設定と、ChainLPのサイドメニューで、「ページ補正」>ノンブル項目の組み合わせでパーセンテージで表示するようにしている。

また、中央下とは別に、kobo自体の「読書設定」で、「余白にページ番号を表示する」にチェックを入れているので、%以外にもページ数は判る。

koboの設定は、「ホーム」の状態で、右上に横に三本線のアイコンがある(電池アイコンの隣)。それを押下すると、日時やバッテリーなどが表示される。その左下の「設定」を押下すると一覧設定が表示される。
そのうち、「読書設定」の2ページ目に該当欄がある。1ページ目は、画面のどこをタップ(軽く叩く)すると、次ページないし前ページへの移動を設定し、2ページ目で、余白のページ番号が設定できる。

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 青空文庫のルビ

ついでに、「ルビ」の表示に成功している例として「青空文庫」のフォーマットについて言及しておく。

本当は、ルビには、「モノルビ」「集合ルビ」とがあり、「青空文庫」では、それを同一にあつかっているのだが、判りやすいので、初歩的な事例としては、これで、よいだろう。
(ちなみに、モノルビとは、「紅」という1文字に「あか」とルビ文字を振るようなものであり、集合ルビとは、「拡現」という2文字(以上)の親文字に「オーグ」といったルビを振るものだ)

青空文庫のルビは、きわめて簡単だ。
ここでは、青空文庫サイトから落としてきた、太宰治の「走れメロス」を事例にあげる。
かの有名な冒頭の1行は、青空文庫のテキストでは、次のようになっている。

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐《じゃちぼうぎゃく》の王を除かなければならぬと決意した。

親文字の「邪智暴虐」のルビとして、《じゃちぼうぎゃく》が指定されている。

本来ならば、ここは1文字の親文字に対して、ルビが振られるモノルビなので――、

メロスは激怒した。必ず、かの邪《じゃ》智《ち》暴《ぼう》虐《ぎゃく》の王を除かなければならぬと決意した。

――となるところだが、まあ、野暮は云うまい。
(さらに云えば、ルビ文字は、本当は、撥音や拗音がなく、正確には邪《じや》……虐《ぎやく》となるのであるが、ここでは、措く)

青空文庫では、モノルビと集合ルビの区別がない代わりに、漢字が連続した文脈中の、どこからがルビの親文字であるかを示す「区切り記号」として「|」がある。凡例の次のような場合だ。

(例)疲労|困憊《こんぱい》

これで、「彼は疲労困憊した」とある文章で、「こんぱい」の親文字が「困憊」であることが判る(というか、ビューアでの指定がなされる)。
青空文庫のルビ指定は、これだけである。実に簡単だが、それで充分なのだ。

青空文庫が、ビューアでどう見えるかは、拙サイトのWZ Editor の操作説明ページで紹介している。
筆者は、エディタはWZ 派なので、そのマクロを使って、ビューアとしているが、画面上は、次のようになる。
(青空文庫のファイルをルビも含め縦書きで表示可能にするビューアとしては、フリーソフトの「ArisuViewer」などがあり、Vectorや窓の杜サイトでダウンロード可能である)

wz editor

たった、あれだけの工夫で、ルビがキチンと振られていることが判るだろう。

特に、区切り記号「|」によって、「一番獰悪」という箇所で、親文字の「獰悪」のみを限定し、そこにだけルビが振られているのは、見事というしかない。

青空文庫のタグ付きテキストの規則は、本当はもっと奥が深く、たとえば圏点や挿絵の挿入も可能だし、テキストをそのまま「組版」として印刷所で本の形に出力できるほど優れている。
(詳細の一部は、下記URLに記されている。関心ある方は参照ありたし)

http://kumihan.aozora.gr.jp/slabid-19.htm

しかしながら、上述しただけでも、その一端は理解できると思われる。
先達の見識に深く感謝して、ありがたく、その成果を活用させてもらう次第である。

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 表紙画の挿入

これは、挿絵の位置合わせが、まだ完全に理解できていないため、表紙(サムネイル)画像の配置だけに話をしぼって、記述する。

まず、サムネイル画像を用意する。
自分独りで娯しむだけなら、ネットで拾ってきた画像でもいいだろうが、他人の披見に及ぶような場合は、きちんとしたフリー素材の画像を用意すること。

ここでは、HDDの中にあった、「trapezohedron001.jpg」を使う。
なぜ「輝やくトラペゾヘドロン」なのか、というと、このバカSFは、一部、クトゥルー神話に依っており、本当なら、作中に登場するナイアルラトホテップの適当な画像にしたかったのだが、最近では、ネットで画像検索かけると、「這いよるニャル子さん」の方が先に厖大な数が出るので、上手くない(笑)。このファイルは、公開の意図がなく、自分で楽しむだけのために制作しているので、まぁ、これでもいいだろう(笑)。とりあえず、表紙に何かないと寂しいので、付けたまでである。

とりあえず、「darma.txt」と「trapezohedron001.jpg」を同じChainLPのサブフォルダ「sagyo」に格納しておく。

ここからは、テキストファイル上の記述となる。

エディタでテキストを開いて、初っ端のところに、次のようにHTMLに準拠したイメージタグで記述する。

<img src="trapezohedron001.jpg" >

WZエディタ上では、以下のように表示される(WZの仕様で画像も表示される。エディタによって異なる)。

wz editor

次に、ChainLPで、「darma.txt」を読み込む。
すると、同時に、テキスト内に記述された画像ファイルも、表紙として読み込まれ、次のような画面になる。

ChainLP

後は通常の手順どおり、章題の取得をチェックし、標題と著者名を入力すれば用意はOK。
そして、「出力」ボタン押下すれば、ePUB3ファイルが出力される。

下図は、出力ファイルを、簡易電書ビューアでもあるFirefoxのアドオン機能で閲覧している。
見た目で判るとおり、あまり画質がよくない。だが、あまり高画質の元画を用意して、内部変換でエラーになっても困るので、目下、最適値を探求中である。
志ある方は、ぜひ、ご自分で、最適値を求めてもらいたい。

Firefox

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 圏点(傍点ほか)

青空文庫のタグで、ChainLPで実装しているのは、ルビだけではない。
「圏点」、つまり一般に「傍点」に代表される文字を飾るものも実現されている。

ただし、ルビのタグのように特定のタグだけで表現しているのではなく、ちょっと変わった記述の仕方をする。
たとえば、これは、上記の拙作「だるまさん」で、実際の作品では無かった箇所にあえて、傍点を振った例だが、原文では――、

「シズカの可愛らしいあえぎ声が、ひときわ高くなって」

とあるところの「あえぎ」だけに傍点を振ってみることにした(実際に試作した)。
(青空文庫では、古い形式と、HTMLに準拠した<em>タグを使う新しい形式があるが、ここでは古い方式でやっている)

次のように記述する(「#」は全角)。

シズカの可愛らしいあえぎ[#「あえぎ」に傍点]声が、ひときわ高くなって

これが傍線の場合だと――、

シズカの可愛らしいあえぎ[#「あえぎ」に傍線]声が、ひときわ高くなって

――とする。
「傍線」では普通の傍線「――」だが、「二重傍線」だと「==」のようになる。他に、「鎖線」、「破線」、「波線」など表示にしたがって、各種の傍線が引ける由。
これで、圏点は表現される。

例によって、Firefoxのアドオン機能のePUBリーダで見てみると、次のように表示される。

Firefox

これらや、これ以外のChainLPで実装されている青空文庫のタグや組版に関しては、先に挙げたヘルプファイル「ChainLP.txt」の、論理行678行からの、ChainLPの「詳細設定」の「青空テキスト」の解説に詳しい。

特に「■サポートしている青空タグ」(論理行749行から)に、実際のタグの説明が載っているので、関心がある方は是非、読んでほしい。

ただし、該当箇所だけでは、肝心の青空文庫のタグが判らないので、先述した「青空文庫の組版案内」サイトなどを併読しながら、理解を深めることを推奨したい。

むろん、実際の印刷所や、事前に編集部が行っているテキスト処理は、とてもこんなものではないが、少なくとも、以上に上げた程度の前処理をやっておけば、一通り、他人に見せられるePUB3ファイルは出来る。商品として流通させよう、といった野心があるのなら、その限りではないが、自分で作成して満足し、友人らに頒布する程度であれば、以上の程度で十分だと思われる。

ただ、電子書籍の大本は、現実に行われている「印刷」という、非常に奥が深い職人の世界だから、本当にのめりこむと、とても、こんなものでは済まない。
ChainLPも好いソフトであるが、cssを使ったりして、細かいフォント指定や挿絵の挿入といった組版をプロ並にやるならば、もっと別なソフトが必要になるだろう。

だが、それは現在の筆者の任ではないし、今のとこ、そこまで凝った電書を作成したいとも考えていない。
とことん突き詰めたいなら、そうした人が独学でやるべき(あるいは、いっそプロの編集に、報酬と引き替えに依頼するべき)次元の話だと思う。要するに、以上で述べたことは、アマチュアレヴェルの話である。そこは、抑えておいてもらいたい。

とまれ、ChainLPの仕様に関する(簡単な)説明は以上である。
各人、各様のやり方はあるだろうが、その一助になれば、望外の喜びである。

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  • Last Updated: 2014.11.15


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